8/2日(土)~6日(水)4泊5日の日程で、2008年度SSH重点枠予算によるボルネオ研修が行われました。そのレポートが半田先生から届いています。最下段に写真があります。(13枚)
生徒の集合写真(7枚)は保護者専用ページからどうぞ。
このプログラムは先に報告しているシンガポールNJCとの共同研究「熱帯温帯の菌類調査」の1項目として計画したものです。参加者は1F加藤有香子、2A細田幸佑・黒岩千尋、2H春田かすみ、3F板野誠也・渡辺輝彦の計6名、引率教員は半田(情報科)、内野(総合学習科)です。以下にこの研修の概要を書きます。
8月2日(土)8:00成田空港集合
10:30成田→16:40クアラルンプール、トランジットの待ち時間に売店でキノコのグミを発見し生徒が喜ぶ(帰りに、SSHクラブのキノコ班への土産として買っていこう、という話になるが、結果として帰路見つけることができず)。18:30クアラルンプール→20:15クチン、空港が思ったより大きく、驚き。
ホテルは、この時期サラワクのイベントがあるとかで、通常のホテルが取れず5つ星になったが、部屋へ行ってびっくり。バスルーム2つ+寝室3つ+トイレ2つ+リビング+ダイニング+キッチンのスイートルームが、教員一人に各1つ、女子生徒に1つ、男子生徒に1つ。この部屋を一人でどう使えといいのでしょう?でも、生徒は大喜び。明日の日程および注意事項をミーティングで伝えて解散。翌日が偶然日曜日で、サンデーマーケットが開催されることを知り、今回は強行日程でクチン見物の時間が取れないことから、明日5:45集合でマーケットへ行くことにする。
8月3日(日)クチンはボルネオ、サラワク州の州都。コロニアルの建物が多く、サラワク川の周囲にゆったりと広がる緑が多い、美しい街である。ホテルの窓から見るその光景は、金色のモスクや王宮、コロニアルの建物、芝生の公園に街路樹と、大変美しく驚いた。東南アジアの街には数多くでかけたが、美しさでは1・2を争うかもしれない。
5:45フロント集合、タクシーに交渉し、6:00~7:00の1時間拘束で35リンギット(1リンギット=35円)にしてもらう。タクシーでサンデーマーケットへ。見慣れない淡水の魚や野菜、果物が珍しい。豚肉もその場で解体して売っている。早朝で薄暗いにも関わらずにぎわっている。1リンギットでモンキーバナナ一房を購入しみんなで試食。野生のキノコも売られているとのことだったが、残念ながら見られなかった。
7:15ホテルで朝食。5つ星だけあって大変おいしい。
8:00セメンゴの野生動物センターでオランウータンリハビリプログラムの見学。結構観光客が多い。ここでは母親にはぐれた子オランウータンを保護し、野生に戻す努力をしている。しかし、我々はオランウータンの餌付けよりも通路わきのキノコやウツボカズラに興味が惹かれた。土を採取し養分を測定している姿に、外国の観光客が注目している。
9:00セメンゴ苗畑センター見学。日曜なのにわざわざ所長が出勤し案内してくれた。今回の研修のコーディネイトをしてくださったInsarツアー社長の酒井さんが通訳をしてくれた。酒井さんは「サラワクの母」と呼ばれている現地の有名人(検索サイトで「サラワクの母」で検索できます)。熱帯雨林が世界的に消滅している中で、ここでは特にフタバガキの苗を育てて植林を進めるとともに、地元に経済的な利益をもたらすと同時に熱帯雨林の再生につながるような努力をしている(HIVの特効薬やリップスティックの油分がフタバガキ科樹木から得られていることをご存知ですか?)。その後、酒井さんの案内で近くの70年もののフタバガキ植林地見学。テツボクという水に沈む唯一の木の世界一大きな木の実や青いカタツムリなどそこかしこに珍しいものばかりである。入口近くに胡椒畑があり、つまんで食べてみる。サラワクの胡椒は、その品質と味において世界一とのこと。胡椒の味の違いと言われても区別がつきませんが。
12:30クチンに戻り、マレー料理レストランで昼食。ここで、クチンでは初めて日本人に会う。大阪と広島の高校生のグループで、イバン族(昔の首狩り族)のロングハウス(高床式の先住民族の共同作業を営む住居。150メートルの長い建物の中で200人位が共同生活をしている)ホームスティプログラムの帰りとのこと。不思議なもので、海外で日本人が多いと「日本人に会いたくない」と思ってしまうが、日本人が全くいない土地では妙にフレンドリーに感じてしまう。教員も生徒も、まるで友達のように話している。
グヌン・カディン国立公園へ行く途中11年物のフタバガキ植林地の見学。70年ものに比べるとさすがに欝蒼とした感じはなく、赤道直下の日が差し込んでくるのでさすがに暑い。
15:00途中で水を確保し、グヌン・カディンのロッジに到着。シャワーは水のみ、もちろんエアコンも売店もない。16:00ラフレシアを見に出発。何箇所か案内されたが運悪くすべて蕾であった。でも、菌類はいろいろチェックできた。また、ヤスデは日本のものと大きさのスケールが違い、生徒が驚いている。K岩さんは大胆にもヤスデを手に載せている。
夕食は、一番近い街まで出て。食べていると虫が天井から落ちてくるし、壁にはヤモリがいっぱい。「こんな環境で食事OKなのは学院生の何%くらいかな?」と生徒たちが話している。ロッジに帰り、翌日の注意事項をミーティングで確認。ミーティング中に始まった熱帯特有の激しいスコールに驚き。その後就寝のはずだったが、部屋は暗いので読書もできない。やることがないので、テラスで何となく生徒達と語りあってしまう。気がついたらスコールもやみ、満天の星。生徒達と星空観賞に出かける。天の川もはっきり。南十字星も見える。流れ星もたくさん。消えないうちに3つ願いを唱えると願いがかなうというが、それはできるはずもない。生徒の一人が「願いは紙に書いておけばいいんだ」と発案。
8月4日(月)街に出てローカル麺の朝食。午前中、公園管理事務所ガイドの案内で、研究用のため未解放のC地区に入れてくれる。歩くのはさすがにハード。光がささず暗いため、撮った写真を後で確認するとほとんど手ぶれしていた。岩は苔むしており、よく滑る。半田は足を滑らせ川に落ちる。ホタルのように発光している巨大なダンゴムシのような毒虫や日本では珍しいチャワンタケ、小さなラン類など、目にするものは珍しいものばかり。ガイドとっておきのラフレシアのある場所へ案内してくれたが、残念ながらそこもまだ蕾だった。
昼食はクチンへ戻ってタイレストランで。ここの料理は大変美味だった。
午後、船に乗りバコ国立公園へ。バコは小さな半島で、海岸べりはマングローブ林、それから乾性低木林、奥に熱帯林といろいろな要素を持っている。船着場から徒歩でロッジまでの途中でオナガザルの群れ。ロッジはグヌン・カディンと同様だが、バコは陸路がなく街へ出られないため簡単なレストランと水の売店が置かれている。ロッジの近くで普通に緑の毒蛇や大きなヒゲイノシシ、オナガザルが出没する。荷物を置いた後、遊歩道沿いに観察。マングローブ林近くで、ボルネオにしかいない絶滅危惧種のテングザルに遭遇。珍しいオレンジのカワセミも発見。でも、さすがに海に近く乾いた環境であるため、菌類のバラエティは乏しい。
夕食後、ナイトウォーク。海岸の細長い貝を背負うヤドカリ、マングローブ林にいるホタル群、マングローブの気根の呼吸音、山地に入ってちょくちょく観察できたボーと青白く光るカビのような物質や夜光タケなどを経験。夜空は満天の星。ミーティング後、生徒たちはまた海岸端を散歩したらしい。
8月5日(火)朝、散歩していたらロッジ近くにたくさんのテングザルが来ている。
朝食後、また山中に入る。しばらく歩くとテーブル状の大きな岩の上に出る。オナガザルがたくさんおり、見るとウツボカズラから水を飲んでいる。多くの種類のウツボカズラやアリ植物、珍しい真っ赤な小さいモウセンゴケを観察。菌類はほとんどない。その後、海岸線に回りマングローブ林へ。ムツゴロウのような魚や青と赤のきれいなシオマネギがたくさん。バコはグヌン・カディンと異なり観光客が多い。マングローブ林のごみの多さに感じるものがあったのか、生徒たちは自発的にゴミを集めていた。
昼食時に他の外国人のグループの食料がサルに奪われるハプニング。その後、船でクチンへ。バコは干満の差が激しく、満潮の時は断崖の岩浜になる。干潮のときは300メートルくらい潮が引き、一面の砂浜になる。このときは干潮で船が付けられず、はるか300メートル離れたところにある船まで荷物を全部背負いながら徒歩で移動。しかも、膝まで海のところをあるくので最後はやけくそになり、ズボンをまくり裸足で。
サラワク森林センターで、菌類・バイオ・地質担当者から講義。多彩なお茶菓子とコーヒーの歓待を受ける。特に地質の先生は熱心で生徒の質問に丁寧に答えていた。この後2時間程度の自由時間を予定していたが、大幅に時間を超過し、それはなしに。ホテルの部屋はまたスィートか?と期待されたが、今度は普通の部屋だった(でも、結構広い)。しかも、スィートと普通の部屋のエレベーターが違うため、荷物を背負いながら大幅に迷う。
夕食は市内のフードコートで海鮮。これが最後のクチンになるので、市内のショッピングセンターで自由行動時間を設ける。生徒たちはスーパーマーケットで変な日本語の表記があるスナック菓子を見つけ、喜んでいる。この後、クチンのシンボルである猫の像の前で(クチンは”猫”という意味で、猫の街である)記念撮影後、ホテルまでの2キロほどの道のりを散歩。10:00ホテル到着後、最後のミーティング。「今回のプログラムの良かった点、改良の余地がある点」を忌憚なく語ってもらう。
8月6日(水)4:45フロント集合。みんな全く寝ていないとのこと。6:00クチン→7:40クアラルンプール、クアラルンプールの免税店でお土産購入の後、11:00クアラルンプール→19:10成田、解散。飛行機では案の定、全員爆睡。クチンからの飛行機では通路側H田君が頭を通路側に出して寝ているので、何度もスチュワーデスに直される。W辺君はスチュワーデスに何度も起こされても、まったく不動である。
今回の研修は、全体予算の都合もあり4泊5日に考えられる限りのメニューを盛り込んだ強行軍でした。赤道直下ということもありますが、熱帯雨林の中は蒸し暑く(でも、帰国してからの本庄の方が暑く感じました)歩く量が多いため、発汗量が膨大でした。当初は選択なしのつもりで日数分衣類を持って行きましたが、午前午後で選択を余儀なくされました。加藤以外の参加者は”場慣れ”しているためか、余裕にスケジュールをこなしていました。こののち、NJCと研究成果を煮詰め、11月初頭の立命館でのISSF、中旬の本学院主催SSH成果報告会で発表することになっています。
このボルネオ研修は日本のSSH校の中でもまれな、スケールの大きいプログラムです。実は、途中、何度か挫折の危機がありました。この実現を可能にした背景には、宇都宮大学大久保先生・京都大学山下先生の親身なアドバイス、大久保先生からのご紹介で様々な研究施設へご配慮いただいた酒井様、そして本学院SSH事務担当の棚橋さんの献身的な作業量があります。この場を借りて、参加生徒教員を代表し心からお礼申し上げます。
このようなプログラムを通して、生徒が成長していく様子を確認することは教師として本当に嬉しいことです。教育には時間もお金もかかりますが、それなりに頑張って作った教育プログラムは科学などの知識獲得という意義以上に、人格形成への教育効果が高いように思います。今回それを感じたのは、何度かあった生徒達と研究の方向を語り合ったとき、バコでそれとなく始まったごみ回収のときでした。通常ならば最終日の夜は「明日は早いのだから早く寝なさい」と叱るのでしょうが、こんな経験をしていると「夜通し語り合うのも君たちのためになるだろう」と妙に生徒を信用してしまう自分がいることに気がつきます。



